要観察か、治療か。メインテナンス時のう蝕の対応について迷ったときに見る3つのポイント
日々、後輩たちからさまざまな相談を受けます。
その中には、「これは毎年必ず一度は聞かれるよね」と感じるテーマがいくつかあります。
今回のお話も、そのひとつです。
メインテナンス時の口腔内診査で気になった、う蝕様所見。
院長に報告すると、「今回は要観察」「今回は治療へ」と、見解にばらつきがあるように感じます。高橋さんはどうされていますか?
「前回は様子を見ると言っていたのに、今回は治療?」
新人の頃の私は、その違いが分からず戸惑うこともありました。
同じ人がこの世に存在しないように、同じ歯もまた存在しません。
一見同じように見える所見でも、治療へ移行するケースと、経過観察となるケースがあります。
では、その違いはどこにあるのでしょうか。
① エナメル質の実質欠損は認められるか
観察時には、エアブローが必須です。
唾液で歯面が濡れている状態では、小窩裂溝の変化は見落としやすくなります。
そして、よく見えるミラーも欠かせません。
曇りや傷のあるミラーでは、見落としにつながるだけでなく、丁寧な診療そのものにも影響してしまいます。
(ミラーの管理については、また別の機会に)
まずは、しっかりと観察すること。
診断の前に、「正しく見ること」が最も重要です。
② 肉眼で判断が難しければ、拡大視野で確認する
現在では多くの歯科衛生士学校でもルーペが導入され、学生がルーペを持参して実習に来るという話も耳にします。
ルーペによる観察、あるいはマイクロスコープによる強拡大での観察も有効です。
このカリエスは何が原因なのか。
周囲組織にはどのような所見があるのか。
プラークの停滞因子はないか。清掃性はどうか。
拡大することで、これまで見えていなかったリスクファクターが浮かび上がってくることがあります。
「見える情報が増える」と、判断の精度だけでなく、主治医との会話の質も変わっていきます。
③ 資料採取
私はマイクロスコープで観察し、そのまま写真撮影を行います。
映像をすぐに患者さんや先生と共有できるため、診療の流れがスムーズになり、無駄のない連携につながります。
また、受付スタッフにも映像を用いて説明し、次回予約へとバトンを渡すようにしています。
必要に応じてプリントアウトし、カルテに保存することも臨床ではよくあります。
そして、口腔内写真用カメラで強拡大撮影を行うのも一つの方法です。
その後、これらの資料をもとに、主治医の指示のもとデンタル撮影を行い、診断へと移行していきます。
ここで大切なのは、
「診断をすること」ではなく、診断に必要な情報を揃えることです。
それが歯科衛生士としての大きな役割の一つだと感じています。
院内のルールやクリニックの考え方はそれぞれですが、資料がなければ先生方も判断が難しくなります。
要観察と治療介入の間には、どうしても判断が難しい領域が存在します。
だからこそ、まずは資料を採取し、それをもとに主治医とディスカッションすることが、診断へつながる第一歩になるのではないでしょうか。
診断は主治医が行い、私たちはその診断に必要な情報を整える。
お互いの役割を尊重しながら同じ情報を共有することが、結果として患者さんにとって最善の選択につながると感じています。
診断の正解を探すのではなく、チームとして同じ情報を共有すること。
それが結果的に、患者さんにとって最善の選択につながっていきます。
お互いに気持ちよく働ける環境をつくるためにも、どれだけ忙しくても患者さんファーストで考え進めていきたいですね。
派手なことではありませんが、丁寧に見ること、丁寧に残すこと。
その積み重ねが、臨床を確実に前へ進めてくれると感じています。
是非、みなさんのご感想をお聞かせください!
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